書評:あなたはボノボ、それともチンパンジー? 類人猿に学ぶ融和の処方箋

ボノボというのはヒト科チンパンジー属に分類されコンゴに生息する猿。見た目はチンパンジーと変わらずやや小ぶりで、以前はピグミーチンパンジーと呼ばれていた。1930年頃になって別の種だと認識され当時は話題になったようだ。

本書はチンパンジーやボノボの生態の観察を20年以上続けている古市剛史が書いたもの。

興味深かったのは、ヒト科の同族殺しや性に対する特殊性の説明だ。なんとなく人間の変さが理解できた気がした。

例えば、多くの魚類は成長までのリスクがあまりに高いので、サケが一度に4,000個の卵を産むように多数の子孫を残して確率の低さを補うという戦略をとっている。

ところが、ヒト科の祖先が暮らしていたジャングルは食料も比較的簡単に手に入り、天敵もほとんどいない(ヒョウが時々襲うらしいが稀らしい)環境では、多産するより少数の子孫を大事に育てる戦略の方が有効で、事実ヒト科の動物は皆そういう戦略をとっています。

この戦略を突き詰めた結果、種として生殖について袋小路に迷い込んでしまった。メスは多くの時間を子育てに割き、発情の期間も限定的となるため、オスは常時生殖可能なのにもかかわらず、受け入れるメスがいないという状況に至った訳だ。統計によるとチンパンジーのメスの発情の期間は全体の5%にすぎないらしい。

ここでチンパンジーはこの少ない生殖機会を巡ってオス同士が順位付けに明け暮れ、強いオスがメスを支配し独占するということになる。多くのオスは生殖できずに終わる。同族殺しもボスのオスが交代した際に先代のボスの子供殺しという形で現れる。

ところが、ほぼ同じ状況のボノボはメスが擬似生殖行為を受け入れることで、同じ繁殖戦略をとりながらオスメス間の緊張関係がまったくチンパンジーと異なる状況を作り出している。ボノボのメスの繁殖可能期間は全体の20%程度とチンパンジーよりはマシらしいが、ボノボのメスは繁殖可能時期以外でもオスを受け入れる。オスからすると、繁殖可能な生殖行為なのかどうかは区別できないのでいつも受け入れてくれるメスがいるためオス同士の競争は極端に激化することはない。順位付けもなく、同族殺しも起こらない。

結果として、チンパンジーは群れないでも常に闘争しており群れ間でも争いになることが多いが、ボノボは概ね平和主義である。

はて、人間はどうかな?


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