MINCE - Mince is Not complete Emacs

CP/M-80で動作していたEmacsクローンについて、昔書いた記事が出て来たので とりあえず掲載して置きます。

祝一平氏愛用エディタ

MINCEは祝一平氏の愛用するエディタでした。

1980年代初頭は、やっと16bit機が発表されつつあるという状況で、8bit機が まだまだ現役という頃。私は、 X1/X1 Turbo というSharpのパソコンを 使っていました。当時、Sharp系のパソコン・ユーザーの大きな情報源は、 日本ソフトバンク(現ソフトバンク) から出版されていた月刊誌「 Oh! MZ 」 という雑誌でした。 その誌上においてX1の解析記事などでテクニカルライター として読者の圧倒的な支持を受けていたのが、 祝一平氏 です。

祝氏により、「Oh! MZ」誌上で MINCE について記事が何度か掲載されました。 他のエディタや当時のワープロと比較し、MINCEの動作やインターフェイスが 如何に優れ知的なものかを讃えた記事でした。 当時、OSに添付のエディタは ラインエディタが当たり前の時代で、Sharp系の CP/Mに標準で添付されていた フルスクリーンエディタであるWordMaster に喜んでいた私にとって、氏の記事 は非常に衝撃的で感銘を受けたのを覚えています。 「是非、MINCEを使ってみたいモノだ」と当時恋いこがれたものです。

Note

祝一平(本名:三上之彦)氏は、その後ディスクマガジンの編集長や、 満開製作所の代表取締役社長などと勤められておりましたが、 1999年4月2日に逝去されました。氏の活動が当時のSharpユーザーに及ぼした 影響ははかりしれません。 心よりご冥福をお祈りいたします。

MINCEの入手

MINCEにあこがれたものの、1985年ころはソフトウェア市場も一部のニッチな ユーザーのものでした。 従って、海外のソフトについての情報もなく、 MINCEのような米国産のソフトをどこでも流通しているわけもなくさっぱり手 がかりのない状況でした。

1988年頃モデムで通信を始めた頃で、主にCP/Mで稼動する海外のフリーソフト を日本に紹介していたユーザーグループのパソコン通信に繋いで ソフトウェア を漁っていました。 偶然にMINCEのことを思いだし、掲示板に 「MINCEってエディタ、誰か知ってる?」 みたいな書き込みをした。 すると、そこの会長様がご所有でなんと「譲ってもよいよ」と一言。 早速、ユーザーのオフ会におじゃましてMINCEのディスケット頂くことができ ました。謝謝。

MINCEの概要

エディタとしては、名前からもわかるように Emacsのクローン です。

ただし、 8bit機のOS CP/Mで稼動する・・つまり64KBの制約の上で稼動する ため当然Emacsのサブセットの機能となっています。祝氏の絶賛してた部分も いわゆるEmacsな部分です。

特にEmacsで実現していたリージョンやYanking、インクリメンタルサーチ、 操作系など当時はとてもすばらしく見えました。

あの時代は、ジャストシステムの一太郎に代用される日本産のワープロ、エディタは、 「操作(たとえばコピーなど)」のメニューを選んで、その後対象範囲を選択す るという操作体系がほとんど。 これに対し、MINCEではEmacs同様リージョン(範囲) を指定してから、 「操作」を選ぶという方式で、今から考えればその後GUIで 標準として採用された操作体系です。

何しろ、MS-DOSですらUnixをお手本にシェルを拡張していた時代。こんなことでも、 Unixっぽいって雰囲気と相まって、とてもスマートに見えたものでした。

操作系は標準的なEmacsですが、lispによるマクロなどの機能ない。 キーのリバインドや画面、文字の色などのカスタマイズはできました。 カスタマイズ プログラムにより本体へのパッチという形で実現していたと思 います。

英語圏のソフトのため8ビット目を無視しているようで、日本語の入力・表示は できませんでした。

調べたところ、製品には実際に稼動する製品と、一部ソースで完全にビルド できるライブラリ付きというものもあったようです (標準で添付されていたのか、 別製品だったかは不明)。MINCE自体はC言語 で記述されていたようです。 ユーザーのプログラムを直接変更して機能拡張 したいという要求を無視できなかったようで、いかにニッチな市場であったか がわかりますね。

Unicornという会社について

Mark of Unicornという会社が、このMINCEというアプリケーショ ンを開発し 販売した会社です。1980年代の前半に学生により設立された会社のようでした。 製品としては当初、8bitのCP/M向けにこのMINCEとScribbleというテキスト フォーマッタを開発・販売していました。 これら製品はDOSへも展開したり、 MINCEもPerfectWordという後継製品もでたらしいです。

その後、ワープロ関連ソフトの競争激化に伴い 1984年から賢明にも音楽ソフト の分野へ方向転換した模様。 幸いにして、会社は存続しており日本法人もある ようです。 もっとも、今ではその製品ラインナップの中にはこの懐かしい エディタの名前を見つけ ることはできません。

関連リンク

MOTU Japan
MOTUの日本法人。 https://www.motu.com
The Craft of Text Editing
https://www.finseth.com/craft/ グレイグAフィンゼス著の「The Craft of Text Editing-手作りのテキス トエディタ」の全文が掲載されています。日本では岩谷宏氏がビレッジセンター より1994年に訳を出版しているようです。中にMINCEについての記述が出てきます。
Geek-Girlの Emacs Reference materials
Unix Programerである Jennifer Myersにより保守されているUnix関連の 文書群の一つ。EmacsのImplementaionについてのプロファイルを整理してあり、 MINCEについても簡単に掲載されています。